外国籍住民の社会統合に向けて

現在日本には、人口のおよそ2%にあたる282万9416人の外国籍住民が暮らしています(2019年6月末時点、法務省発表)。日本人と外国人の両親の間に生まれた子どもや、来日後日本国籍を取得した人等、日本国籍は有するが外国に繋がりのある人々も含めると、その数は倍増するとも言われています。全国の公立学校(小学校〜高校、特別支援学校)に在籍する、「日本語指導が必要な児童生徒」数も、年々増加しています(文部科学省発表)。外国に繋がりのある多様な人々も、日本人と同じように、地域の生活者として暮らしています。

ISSJに寄せられる相談の例    

一方で、様々な課題を抱えながらも、それらをうまく表出することのできない外国籍住民を適切に支援する体制が整えられているとは言えないのが現状です。ISSJには、既存の制度や仕組みから取り残され、孤立した外国籍住民から多くの相談が寄せられています。

様々な背景を有する外国籍住民が既存の制度や枠組みから取り残されてしまうには、多くの理由があります。そもそも制度の対象とされてないこと、必要とされる書類を揃えられないこと、言葉や価値観の違いによりコミュニケーションをとることが難しいこと、日本人とは異なる文化的背景への配慮がないこと、そして、当事者の想いが尊重されずに話が進められてしまうこと。
これら多くの理由に共通しているのは、外国籍住民が安心し、信頼関係を築きながら相談できる場がないということです。

このような現状を受け、ISSJでは2019年度より、中央共同募金会赤い羽根福祉基金の助成を受け「日本語教室を介した外国につながる家族へのアウトリーチと相談支援事業」を実施しています。

【コンセプト】

日本語教室や学習支援室といった教室(教育)とソーシャルワーク(福祉)の分野横断的連携に基づく、外国籍住民の課題解決を図ることのできる新しいモデルの構築

【概要】

本事業では、以下の3つの柱を軸に、日本に暮らす外国につながる家族の社会統合に向けて取り組んでいます。

  • 福祉と融合した学習の場(ソーシャルワーカーが介在する日本語教室や学習支援室など)の提供
  • 学習の場を通して、支援が届きにくく孤立しがちな移住者が抱える課題のキャッチ(アウトリーチ)
  • 移住者の抱えるニーズや課題が地域福祉に包含されるよう、地域における情報共有を行い、地域の福祉関係者の理解を促進

複雑で複合的な課題を抱えた外国籍住民は、自身の困難が何に起因するのかを日本の社会システムの文脈において正しく認識することが難しく、十分に言語化することが出来ないために、必要な支援や資源に繋がれないことがあります。とりわけ、女性や子どもは声を上げる場が限られているために見過ごされ、地域や家庭の中で孤立してしまいがちです。孤立した外国籍住民を地域の中に位置付けることは容易ではありません。

一方で、日本語教室や学習支援室は、外国籍住民にとって足を運ぶことに対する心理的ハードルが比較的低く、関係性を構築しやすい場となっています。そういった、安心安全の場に繋がることを通して(場合によってはそのような場を新たに創出することで)、外国籍住民の孤立を防ぎ、抱える課題をキャッチできるようになります。教室に関わる人々が、外国籍住民の抱えている課題の交通整理を行い、必要な情報や支援にアクセスできるようになる基盤づくりを目指しています。

【実施内容】

・国内4拠点での「女性のための日本語教室」や「学習支援教室」の開催

・各拠点における地域との繋がりの構築

・各教室に関わる人を対象とした研修

感染症拡大の影響を受け、対面での教室運営には困難もありますが、現在、広島県と千葉県の2拠点で「ムスリム女性のための日本語教室」を開催しています。
外国籍住民のニーズに寄り添い、彼女らが必要とする教室の形を作っています。