「生活者としての外国人」のための日本語教育事業 ~ムスリム女性のための日本語教室~

ISSJでは、2017年より「ムスリム女性のための日本語教室」を実施しています。

<実施の背景>
ムスリム女性とISSJの繋がり
ISSJでは、コミュニティ支援の一環として、数年前より群馬県に集住するロヒンギャ難民との対話を続けてきました。最初は男性のみと、やがて女性や子どもたちとも話せるようになりました。
ロヒンギャを含め、ムスリムの女性は文化的・宗教的背景から社会との接点が少なくなり、社会の中で孤立しがちです。
女性たちの希望は、移動の自由の確保と日本語の習得でした。自身も日本語を習得し、子どもや家族をサポートしたいと強く願う女性たちの声を大切にしたいと考えました。

 

<コンセプト>
日本語教室を軸とした社会統合プロジェクト
女性たちとの話し合いを重ねながら、彼女たちの希望やモチベーションについて時間をかけて探り出し、見極めるという作業を繰り返しました。
なぜ既存の学習機会を活用できていないのかという点にも着目し、「女性のための日本語教室」を軸とした社会統合プロジェクトの構想が生まれました。

関係づくり ヒアリング・
ニーズの把握
設計 確認 実施
(PDCA)

日本語教室の位置づけ
女性たちにとって、「日本語を学ぶこと」が最終目標ではありません。日本語の習得は以下2つの大きな目標のための大きなステップとなります。
1.習得した日本語を活用し、地域住民として安定的に暮らしていくこと
2.子どもの学校生活をサポートすること
この目標達成に向けて少しずつ自信をつけてもらえるよう、女性たちと地域社会との
繋がりが生まれることを意識して事業を組み立てています。

<事業の枠組み>
●文化庁委託事業
「生活者としての外国人」のための日本語教育事業 地域日本語教育実践プログラム(B)
・地域日本語教室の実施
・成果の発信(日本語発表会、ワークショップでの発表 など)
・地域への根付きの促進
(地域住民とコミュニティとを繋ぐワークショップ、地域専門職との意見交換会など)

<事業の特徴>
学習環境への配慮

特徴 目的
1.指導者をはじめ、関係者は全て女性とする
2.当事者の意向を取り入れたスケジュール/カリキュラム作成(事前ヒアリングの実施、当事者が運営委員会メンバーとなる など)
3.子連れでの参加が可能な教室とする
4.市内公共施設を会場とする
1.参加者及び家族の安心感(理解)の確保
2.継続的かつ効果的な日本語学習の場の確保
3.学習機会の確保、子育て期の孤立防止
4.日本語教室を通して地域住民との接触を増す
効果 期待される成果
1.女性たちの交流の場として機能する
2.教室活動を通して、自分自身や子育てへの自信を深める
3.公共施設に定期的に出入りすることで、地域住民として認識される
1.孤立を防ぎ、コミュニティとしての自立を高める
2.生活者として日本社会に根付き、被支援者から支援者となる
3.地域社会において関心が高まり、理解者や協力者が増える

●日本語教育の専門家および地域との連携
1.領域横断的な知見の融合
・日本語教育の専門家
コーディネーターとしてカリキュラムを作成、
経験豊富な日本語教師による指導
・定住外国人の日本語教育や学習支援を専門とする団体や有識者
・移住者支援を行う団体や有識者
2.自治体(県、市)や地域の団体、関係者の理解と協力

地域との繋がり強化と発信
参加女性の日本社会との繋がりにはばらつきがあるため、いかにして学習成果を日常生活に繋いでいくのかが課題です。地域住民としての根付きを促進していくため、日本語教室と連動させながら、様々な取り組みを行っています。
(例)
・成果発表会と交流会
・市内図書館見学
・地域住民向けワークショップ「ムスリムの暮らしって、どんなの」
日本語を学習中の女性が発表者となり、衣・食・住・教育などについて発信しました。
・地域住民向けワークショップ「やさしいにほんご講座」
・地域日本語教室ボランティアとの情報交換会
・保健師さんとの情報交換会
 

<成果と課題>
これまで家庭にしか居場所を持たなかった女性たちにとっては、日本語教室を通して社会と繋がっている感覚、世界が大きく広がった感覚を持てるようになったことは、とても大きな変化です。
日本語を使って、日本人(地域住民)と話をしたいという強い想いを持っている一方で、日常生活の中では活かす機会が少なく、地域の方々ともどのようにコミュニケーションを取っていけば良いのかわからないために、もどかしさを感じている様子も見受けられます。

<今後に向けて>
2019年も文化庁事業として、本取組を継続します。
支援者やボランティアとして本取組に関わってくださる方を増やしていくことが不可欠と考えています。
*ボランティアを随時募集しています。ご関心のある方はご連絡ください!

【発表/視察受け入れ】
・2017年8月4日 UNCHR駐日代表による視察
・2017年8月26日 文化庁主催「日本語教育大会」ポスター発表
・2017年12月17日 社会福祉法人 さぽうと21主催
「多文化共生社会日本への理解を深める講座「難民への日本語教育を俯瞰する」」活動報告
・2018年6月17日 社会福祉法人 さぽうと21主催
「地域日本語教室ボランティアのための活動基礎講座」活動報告
・2019年1月18日 多文化共生推進協議会による視察
・2019年1月29日 外国人集住都市会議おおた パネル展示