養子縁組は、その時代に応じて子どもたちを支援するための方法として、社会の考え方、そして法律的枠組みは、歴史的に変わり続けています。
- 第二次世界大戦後の日本の状況
- 民法における養子縁組
- 1987年 特別養子縁組制度の開始
- 2018年 民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(以下、養子縁組あっせん法)の施行
第二次世界大戦後の日本の状況

第二次世界大戦後の日本では、貧困や家庭の事情により、子どもの養育が難しくなり、子どもを乳児院や児童養護施設に預ける者もいました。また、1945年から1952年に及ぶ連合国軍の占領下において、連合国軍の兵士と日本人女性との間に生まれた子どもは、当時の社会から距離を置かれ、「混血児」などと称され、差別の対象となっていました。そのため、そうした子どもが預けられた施設の中には、子どもを養子として海外で養育した方が、子どもたちが幸せな生活を送ることができると考えた者もいました。(現在では、「混血児」という用語は差別的な用語ですが、ここでは当時の状況を説明するために使用しています。)
民法における養子縁組

宮城県石巻市の産婦人科医であった菊田昇医師は、1973年4月17日の『石巻日日新聞』『石巻新聞』に「急告!生まれたばかりの男の赤ちゃんを我が子として育てる方を求む。」と掲載しました。菊田は、人工中絶により子どもの命を奪うことなく、子どもたちが安心して暮らしていける環境を探したいとの思いから、人工中絶を望む女性たちを説得し、養子縁組を進めていました。実際には、生まれてきた子どもを養子縁組の手続きをとらずに、最初から養親の子どもとして戸籍に入れてしまうという「藁の上からの養子縁組」を行っていました。藁の上からの養子は、実際には菊田だけでなく、日本各地で行われていたことがわかっています。その要因は家族や周りの人に妊娠を隠したい、養育することが難しい、など様々ですが、自らの戸籍に子どもを入れたくないと考える者もいました。
公的な手続きによって養子縁組を行う場合には、生まれてきた子どもを一度戸籍に入れる必要があります。戸籍は、日本において、人の出生から死亡までの親族関係を登録公証するものです。戸籍事務は市町村で行われ、かつては公開が原則となっており、手数料を払うと誰でも他人の戸籍を閲覧し、戸籍謄本や戸籍抄本を請求することができました。1976年の法改正により、閲覧制度は廃止され、戸籍謄本や戸籍抄本を請求するにも閲覧理由が必要となりましたが、それでも不正に他人の戸籍謄本を取得するなどの利用が後を絶ちませんでした。(2007年の法改正により、第三者の戸籍謄本の請求の要件や手続きが厳しくなっています。)よって、戸籍が誰でも見ることができた時代において、妊娠を隠したい人たちにとって、藁の上からの養子は、戸籍に影響を与えない唯一の方法であったといえるでしょう。
参考文献:下夷美幸『日本の家族と戸籍』東京大学出版会、2019年
1987年
特別養子縁組制度の開始

特別養子縁組制度が1987年に成立してから35年以上が経過しました。特別養子縁組も様々なメディアで取り上げられるようになり、「養子縁組」という言葉を聞く機会は多くなりました。しかし、かつては養子であることを「墓場までもっていく」秘密であるようにとらえていた時代があったように、子どもの福祉のために、生みの親や養子縁組の経緯を伝える「テリング」を前提とする養子縁組が行われるようになったのは、まだまだ最近のことなのです。
ある養子縁組あっせん機関は1992年12月から2009年12月までに養子縁組をした養親へのアンケート調査を実施しました。335組を対象としたアンケート調査に、175人から回答が寄せられました。質問の「告知について」という項目では、44組の養親が既に養子に対して告知を行っていたと回答し、これから行なうと答えたのは、64組でした。それらは養子縁組全体の約3割で、真実告知に否定的であったのは17組、保留にしていると答えたのは18組でした。告知を否定した人たちの見解を見ていくと、「告知したくないのは、やはり本当の親子だと思っていたいという気持ちが強いからだと思います」「告知はしない。子どもに将来、精神的負担をかけないように特別養子縁組の手続きをしたわけですし、あくまで私共は実子と考えているからです」とありました。実子と考えたいからあえて告知しないという選択をする様子が窺えます。また、これらから告知をしたいと答えた人の中にも「12歳頃、父母より告知したい」や「できれば思春期以降。養育過程においては、わざわざ子どもの心をゆさぶるようなことは避けたいと思う」というように、早期の告知というよりも、12歳、18歳など節目で伝えたいという意見もありました。時を経て養親の告知に対する考え方が次第に変化していったことを示す貴重な資料です。
参考文献:堀章一郎編『岡山県ベビー救済協会20年の歩み』、岡山県ベビー救済協会、2011年
2018年
民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律
(以下、養子縁組あっせん法)の施行

それまで民間のあっせん団体が「届け出」することで養子縁組をあっせんしていたが、養子縁組あっせん法の施行により自治体からの「許可」を受けた団体のみが事業を行うことになりました。
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