突然、養子であると告げられ、頭が真っ白に

さまざまな事情で、血のつながりのない親子が家族として結ばれる養子縁組。子育ての悩みはどの家庭にもあるものの、養子縁組当事者の方は、特有の悩みを抱えることがあります。

それらはどのような悩みなのでしょうか?

・遺伝性の病気の可能性があると告げられたので、産みの両親にもこの事実を知らせてあげたほうがよいのか?
・産みの親はどんな性格なのだろう?見た目は遺伝するのだろうか?
・産みの親に会いたいと伝えたら、大好きな育ての親を傷つけてしまうかもしれない
・突然自分が養子であることを告げられて、頭が真っ白になってしまった。
・養子の仲間が近くにいたら、悩みをわかち合えるのにな・・・
・産みの親に会いたいと打ち明けたら、過去にこだわるのはよくないと言われてしまった。
・養子を迎えたが、いつ本人に養子であることを伝えるべきかわからない。伝えたら養子の気持ちが離れてしまうかもしれないと不安を抱えている。

これらはすべて、当事者から実際に寄せられた声の一部です。

悩みは、遺伝による健康上の心配から、育ての親に対する配慮、周囲の目、自分のルーツを知りたいと思う気持ちとその葛藤、自分の悩みが理解されないという孤独感まで、多岐にわたります。もちろん人によって異なりますし、悩みの程度もそれぞれかもしれません。

ISSJが運営する『養子縁組後の相談窓口』は、ワーカーと当事者がメールや面談を通して、養子縁組が成立した後の悩みについて一緒に考え、支援する場として機能しています。悩みを解決するために、行政や他機関と連携することもあります。現在は、養子の方からの「産みの親に会ってみたい・ルーツを知りたい」という相談が多く寄せられています。それだけ、養子の方にとってご自身のルーツを知るということが大切な意味を持つのです。

たとえば、このような相談がありました。

ある20代男性は、近所の人から突然自分が養子であることを告げらました。養親が愛情を込めて育ててくれたという事実を大切にしたいと思った男性は、養子であることは気づいていないフリをしながら養親との生活をともにしてきました。しかし、ご自身がご結婚され、子を授かったことをきっかけになぜ自分は養子に出されたのか知りたい、という気持ちが高まり、産みの親との再会を目的に相談されたのです。ISSJでは、産みの親に会いたいという気持ちを尊重しつつ、現行の制度では必ずしも産みの親に会える保証がないことを伝えた上で、産みの親に会いたい理由を一緒に整理しました。男性は産みの親に会うということがご自身にとって何をもたらすのかをもう一度考えたいとの意向を示され、現在は奥様のサポートを受けながら、「ルーツを探すこと」への心の準備をされています。

『養子縁組後の相談窓口』は、日本で最初に立ち上がった養子縁組成立後の悩みを相談できる場です。当事者の方たちに「困った時にはここに相談すればいいんだ!」と安心してもらえるよう、私たちは一層努力していきたいと思っています。